炎症性腸疾患

炎症性腸疾患とは

炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)とは小腸や大腸などの消化管粘膜に炎症が生じる病気の事を言います。炎症性腸疾患は炎症の原因が明らかなものと原因不明なもの(潰瘍性大腸炎、クローン病)に分類されますが、一般的には原因不明とされる潰瘍性大腸炎とクローン病の2つの総称を炎症性腸疾患(IBD)と呼びます。

炎症性腸疾患 原因が明確
特異的炎症性腸疾患
  • 細菌やウイルスの感染によるもの
  • 薬剤の影響によるもの
  • 虚血性大腸炎
  • 腸結核
原因不明
非特異的炎症性腸疾患
  • 潰瘍性大腸炎
  • クローン病

潰瘍性大腸炎について

潰瘍性⼤腸炎は、直腸の粘膜や粘膜下層にの傷やただれが生じ、炎症が起こっている状態のことを言います。症状としては下痢や腹痛、血便(粘血便)などがあらわれます。現段階で明確な発症の原因は明らかになっていません。近年日本では潰瘍性大腸炎の罹患率は上昇しており、特に20〜40代の患者数が多くなっています。

潰瘍性大腸炎について

考えられる発症の要素

潰瘍性大腸炎は明確な発症の理由は分かっていませんが、以下のような要素が絡み合い発症に至ると考えられています。

①遺伝的要因

潰瘍性大腸炎は遺伝疾患ではありませんが、発症率に影響を与える遺伝子があるといわれています。

②環境的要因

食生活や生活習慣、衛生状態などの環境要因も影響していると考えられています。

③腸内細菌

炎症性腸疾患の患者様は健康な人と比べ、腸内細菌の種類や量が異なっていると報告されています。このことから腸内細菌が関わっている可能性が考えられています。

クローン病について

クローン病は消化管の粘膜に原因不明の炎症が生じる疾患です。炎症は口から食道、胃、十二指腸にいたり得ます。潰瘍性大腸炎と違い、クローン病の場合、小腸や大腸の炎症のみならず、口や食道、胃、十二指腸にも炎症が起こる可能性があります。また、ローン病の炎症は粘膜だけでなく、更に奥深く腸壁までおよびやすく、潰瘍性大腸炎に比べ腸管の合併症の発症率が上がります。日本では、10~20代の患者数が多くなっています。

クローン病について

クローン病も潰瘍性大腸炎と同様に発症する正確な原因はわかっていません。
近年の研究では遺伝的素因や生活習慣(食事、喫煙)などのさまざまな要素が絡み合い免疫異常が引き起こされてクローン病が発症するのではないかと考えられています。

炎症性腸疾患の検査方法

まずは、問診で症状を詳しくうかがいます。医師の判断で血液検査、腹部レントゲン検査、便培養、下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ検査)どを行う可能性があります。

下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ検査)

下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ検査)下部消化管内視鏡検査とは、肛門から先端にカメラのついたスコープを挿入し、肛門から直腸・S状結腸・下行結腸・横行結腸・上行結腸・盲腸・回腸末端部 に異変がないかを調べる検査です。下部消化管内視鏡検査中に病変が見つかった際は、その組織を採取し詳しい検査にまわしたり、ポリープが見つかった場合はその場でポリープの切除をすることができます。炎症や潰瘍の状態、範囲を直接確かめられるため、適切な治療に大きく役立ちます。

下部消化管内視鏡検査